イロハニトイロ

vol.49-② 支援者が障害を作っている!?

【 不思議体験 】

vol.48では支援者が障害をどのようにして作っているのか、について言語化していきたいと考えています。

それを語る前に、土台としてある、僕自身の情けない体験を話す必要があると思っています。

これは以前にもブログで書いたことなので、ご存知の方もいらっしゃると思いますが再度話させてください。

僕は作業療法士です。

作業療法士は国が認めているセラピストです。

セラピスト(治療者・支援者)の役割はクライエント(患者・利用者)を良くすることです。

体を良くする。

心を良くする。

生活を良くする。

つまり今の困った状態より、より良い状態に変えることが使命です。

ですから、大学(専門学校)で多くの専門的な知識を学びます。

国家試験に合格した後は、実際の現場で実務を学んでいきます。

多くの失敗と勉強を繰り返しながら、セラピストとしてのスキル(能力)を高めていくわけです。

作業療法士をしていると、ここに疑いの余地は決してありません。

「この色は赤です」と言われて、

「赤色」を目に捉えて、赤色に見えていることを実感する。

それを「いや、これは青色です」とはならないわけです。

「そうです。おっしゃるとおりこれは赤色です」

となる感じです。

そんな風に精神科病院や精神科デイケアで10年以上の実践を積み、

多くの書籍を読み、

研修にも多数参加し、学びを深めていった僕が、

8年前に初めて訪問看護(訪問作業療法)という仕事に就きました。

これまでの「施設」という制約のある環境の中とは違い、

「個人の自宅」での支援となりました。

そして「集団」での関りではなく、「個人」での関わりが中心です。

(もちろんご家族を含めてなど、時に複数になることもあります。)

これらのことに対する不安はあまりなく、

むしろ「誰にも邪魔されずに目の前の人と向き合え、自分の培ったセラピストとしての技術が発揮できる場所」だと思うくらいでした。

しかし、実際は・・・

利用者さん、みんなから嫌われていくことになります。

(「みんな」と言うと語弊がありますが、ほとんどの人が僕への態度を変えていきました。)

病気が悪化していきます。

生活も悪化していきます。

関係も悪化していきます。

訪問することすらも拒否されるようになります。

これまで施設の中でやってきたことが上手くいかないわけです。

利用者本人の希望を聞き、利用者に寄り添い、希望を叶えられるよう自分のできることを誠実に行っているつもりでいる。

なのに上手くいかない。

こんなのおかしい!

「あなた(利用者さん)の希望通り支援しているじゃないか!!」

「きっと全ての原因は、この目の前の精神障害者の人たちなんだ。」

「やっぱり面倒な人たち。」

「そこにちゃんと向き合っている自分はなんてエラいんだろう!」

こうやって自分を正当化させながら訪問看護を行っていたのでした。

あーーー、書いているだけで恥ずかしくなります。

こんな自分がどのように変わったのか、

何が僕を変えたのか、

そしてそこからどんな気づきを得たのか。

次回から少しずつ続きをお話させていただきます。

ずっと赤色に見えていた。

疑いもしなかった。

ただ気付いていなかっただけ。

僕自身が「赤色のレンズの眼鏡」をかけていたことに。

その眼鏡を外した時、僕が障害者を創り上げていた犯人だということに気付けたのです。

          イロハニトイロ所長

               金村栄治