vol.49‐④ 支援者が障害を作っている!?
- 2024年03月04日
- 所長の学び
【 不思議体験(続き2)】
大喧嘩をした利用者さんのご自宅へ戻ったときのお話です。
その方は、1年以上のお付き合いがあり、最初から僕に対して態度が悪かったり暴言を吐いていたわけではありません。
とても優しく友好的な態度の方でした。
そしてこの方だけが態度を悪くしていったのではなく、僕の訪問する人の多くの方が態度だけでなく病状や生活状況を悪化させていました。
本人の望むように支援している。
怒りや暴力で従わせることも一度もしていない。
それどころか自分の時間を犠牲にしてでもその利用者さんのことを考え行動している。
なのに一向に病状や生活は良くなっていかず、
それどころか今回のようなことまで起こっている。
あれ?間違っていたのはこの僕?
これまで正しいと信じてきたものが本当は間違っていた?
いやいや、そんなこと認めたくない。
でも分からない。
分からないなら教えてもらうしかない、と次の訪問をキャンセルし、大喧嘩をした利用者さんのところへ戻ったのでした。
玄関のチャイムを押すと、その方は何も言わず僕を招き入れてくれました。
「先ほどはすみませんでした。」
と謝罪する僕に、先ほどのことには何も触れず、
「金村君、今から喫茶店にいかない?」
と仰ったのです。
近くの行きつけの喫茶店に初めて連れて行ってくださいました。
1年間通ってもそんな喫茶店の存在すら教えてくれなかったのに。
そしてその喫茶店の中で、初めて“本当の思い”を話してくださったのです。
それは、
「僕たちはね、金村君のその一生懸命さが苦しいの」
「金村君のその正しさが苦しいの」
「僕たちはただこの気持ちを分かって欲しいだけ」
「金村君が一生懸命にしてくれればしてくれるほど、自分が惨めに思えてくる」
「分かっているんだけど、できない自分が情けなくなる」
「金村君が嫌いなわけじゃないんだけど、やっぱり今は作業療法は僕にはいらないかな。」
「今までありがとう」
と穏やかな口調で話してくださいました。
僕が正しいと思い、この人の為だとしていたことがその人を苦しめていたのです。
こんなこと聞いたこともなかった。
先生も先輩も誰も教えてくれなかった。
いや、僕が聞こうとしていなかっただけかも。。。
支援者という枠の中で、
勝手に自分たちで“正しさ”を作っていて、それを信じ込んでいただけ。
本当に学ぶべき相手は目の前にいつもいた。
いつも訴えてくれていた。
伝え続けていてくれていた。
なのに、僕はそのことに全く気付いていなかったのです。
この方からのその学びをしっかり受け止め、
当時訪問させていただいていた利用者さん全てに謝罪することにしました。
いかに僕が皆さんを苦しめていたのか、
いかに自分のための支援をしていたのか、
「あなたの為」なんて大嘘だった。
結局全ては「自分の為」だった。
そんなことに気付けず、皆さんを苦しみ続けてしまって申し訳なかったことを謝罪したのです。
すると、利用者さんからも様々な本音を教えていただけることになったのです。
そして、
僕との関係も病状も生活状況も悪化していた利用者さん達がどんどん変化していったのです。
その不思議体験を次回お話させていただきたいと思います。
イロハニトイロ所長
金村栄治