vol.39-③ 「ケア」と「セラピー」で解き明かす!part2
- 2022年07月04日
- 所長の学び
こんにちは。
前回の続きになります。
イロハニトイロの正体を説明するにあたって、「ケア」と「セラピー」の視点で説明すると分かりやすい、というお話をさせていただきました。
今回はその具体的な内容を説明したいと思います。
これを読んでくださっているあなたは、「ケア」と「セラピー」をどのようなものだと考えてらっしゃいますか?
「ケア」って、
なんか傷ついた部分を癒してくれる
あたたかいもの
そんなイメージがありませんか?
一方で
「セラピー」って
なんか自分の心の深い部分まで入っていって治療していく
苦しそう
そんなイメージがありませんか?
前回紹介した本「居るのはつらいよ」では、「ケア」と「セラピー」の違いをこのように分かりやすく説明してくれています。
「ケア」とは
傷付けないこと
「セラピー」とは
傷つきに向き合うこと
とっても分かりやすい説明ですね。
もう少し詳しく説明すると、
「ケア」は
その人のその時々のニーズ(どうしてもらいたいのか)に応えて、相手を傷付けないこと。
そうやってその人の依存を引き受けること。
その人が変わるのではなく、周りの環境の方が変わる、ということです。
一方で
「セラピー」は
ニーズを満たすことではなく、そのニーズを変更することを目指します。
「依存」ではなく「自立」を原理としています。
つまりその人自身が変わることで自ら「自分の問題」を解決し、より生きやすくなるための試み、
ということです。
そしてこの本では、こんなことも書かれています。
「ケア」と「セラピー」は仕事の違いの事ではなくて、液体の中の「糖分」と「塩分」のような成分の違いだと説明されています。
つまり、人間関係の中にはこの両方が常にある、それが当然、というわけです。
はい~~~、ちょっと堅苦しかったでしょうか。
「ケア」と「セラピー」の違いはこのあたりにして、それを踏まえた上でイロハニトイロという場所を見てみたいと思います。
イロハは、基本的には「自由」なんです。
「こうしなさい」「ああしなさい」
「こうすべき」「こうすべきでない」
そんなことはありません。
常に言われることは、
「あなたはどうしたいのか?」
です。
「あなたはどう感じているのか?」
です。
そして、どんなあなたでも
「それでいい」
です。
何か失敗や間違いが起こっても
「それでもいい」
です。
イロハの理念が「それでいい それがいい それでもいい」でしたね(ブログvol37参照)
いかがですか。
少しずつイロハニトイロの正体が見えてきたと思いませんか?
イロハの考えである
ダメでいい、弱くていい、サボっていい、間違っていい、失敗していい、
どんなあなたでもいい。
これって「ケア」なんです。
だから傷ついてきた人にとっては、イロハが癒しの楽園のように感じてしまうわけです。
(見学者や体験者の多くの方がこう感じてしまうようです。しかし、他機関の支援者の人は、それを「怠け者の楽園」のように見えているようですが。)
しかし一方で、イロハの考えとしてこんなこともあるんです。
察して動いてあげない。
先回りしない。
問題を解決してあげない。
スタッフもメンバーも自分の思いを大切にして相手に伝える。
そうするとどうでしょう?
「あなたがどうしたいか?」に向き合わされてしまうんです。
自分が問題を作っている事に向き合わされてしまうんです。
自分の苦しさは自分が変わらないと根本から無くなることはない、
ということに向き合わされてしまうんです。
つまり、本当の意味で心からラクになるためには
「私自身が変わること」に気付かされ、そしていつしかそれに真正面から向き合わされてしまうんです。
苦しいですよね~。
もちろん、無理矢理にではなく、自らが向き合うかどうかも決めていきます(まぁ、癒しを得られた人は自然と自分の課題に向き合うことになっていくものなのですが。ホント人間て強くたくましいと毎回思わされます)。
これって「セラピー」ですよね。
だから、多くの人がイロハにいることが苦しくなってくるんです。
今までは
「病気だから○○できない」
「病気なんだから助けてよ」
「病気なんだから仕方ない」
で自分を守れていたのに、
イロハではそれが通用しなくなるんですよね。
これに耐えきれなくなった人は、「イロハの○○が悪い」と自分以外のもの(スタッフや他のメンバーや環境など)に理由をつけて辞めていくことになるのです。
そりゃそうです。
もうこれ以上自分は傷つきたくないのですから。
当然の行為ですよね。
だからイロハではそのことも責めないです。
むしろこのことすら、イロハでは「それでいい」と認めます。
そんな風に自分を大切に守っている事すらも大切にして頂きたいのです。
だから退所希望の人がいても絶対に止めません。
でも、
でもですよ。
その辛さに耐え、留まることが出来た人。
つまり、自分の課題に向き合い、自らの力で乗り越えた人は再び「イロハが素敵な場所」になっていくんです。
(「自らの力」というのは自分の意思で乗り越える決意をすることという意味です。実はイロハでは乗り越えるためにたくさんの「他の人の力(他力)」も借ります。自力で乗り越えず、他力に助けられて乗り越えていく。それがイロハです。)
それが、イロハをずっと利用してくださっている人や、一般就労された方々です。(メンバーインタビューブログをご参照ください)
後になって「あの頃は金村さんが大嫌いだった」なんて聞かされるのはよくあることです。
それが言えるだけ、その人自身が変化をし、変化をすると大嫌いだった金村も「悪くないかも」に変わっていってくださいます。
これがイロハニトイロの正体です。
しかしこれではまだまだ「正体を明かす」というところでは不十分ですよね。
次回は、「自由」という環境の視点で正体を解き明かしたいと思います。
今回も長くなりましたが最後まで読んで頂きありがとうございました。
イロハニトイロ所長
金村栄治