イロハニトイロ

vol.38-② 以前の考え

こんにちは。

イロハニトイロで所長をさせていただいている金村です。

前回から、どうしてこの僕が今のような考えになったのか、そのきっかけとなったエピソードを公開してみようということで書き始めました。

そして今回がその第2回目です。

今の考えに変化する以前の考えをお話ししておく方が、より分かりやすくていいのかと思い、以前の僕の考えを今回はお話しさせていただくことにします。

昔の僕の考えを公開するのが、現在の自分からするととても恥ずかしくもあります。

なぜかというと、その考えがとっても自己中心的な考えだと今の自分は分かっているからです。

もちろん当時はそんなこと思っていません。

むしろ「患者さんのため」「相手のため」だと疑いようもなく信じ込んでいました。

そして一生懸命、自分の弱さを誤魔化して虚勢を張っていたことにも現在は気付いているからです。

「あなたのため」なんて大ウソ!

全て「自分のため」だったのです!

なんか結論を先にお話ししたような感じですが、それではお話しさせていただきたいと思います。

最初にお伝えしておくと僕は「作業療法士」という資格を持っています。

まあ、簡単に言うと「作業活動を使ってリハビリをする専門の人」って感じの理解で結構です。

「作業活動」って何を指すかというと、

モノづくりも料理も運動も勉強も遊びも整容活動もそして仕事もそうです。

生活に関すること全てを指します。

生活全てですからもちろん休憩することも含まれます。

休憩も活動なんです。

じゃあ、「リハビリ」って何なのかっていうと、様々な機能を以前の状態に戻すことのようなイメージでいいかと思います。
(最近では「リカバリー」の言葉がよく使われます。なぜかというと障害を負って以前の状態に戻る事ってできないからです。以前の状態に戻るのではなく障害を負った今の自分からより良い生活を目指していく、みたいな感じです)。

つまり、

「作業療法」=「より良い状態に変えてくこと」

ですね。

まあ、「○○療法」という言葉が入っているものは全て目の前の人を良くするためのものです。

そんな資格を持っているので、当然様々な「目の前の人を良くする技術と知識」を持っています。(と思い込んでいました)

少し、専門的なお話をしますと、

対象となる人に対して明確な目標を設定し、

そのためにどうすればいいのかを考え、

少しずつ目標が達成できるような計画を立てて、

そして「作業の特性」をしっかりと理解した上でその人に合った活動を提供していきます。

成功体験をより多く積んでもらい、自信を持ってもらえるように働きかけます。

一方で失敗や傷つき体験は避けられるように配慮しながら、より良くなることを目指して訓練していくわけです。

そりゃもう、学生時代も含めると18年間の経験と勉強でたくさんの知識と技術を身に付け、入院患者さんやデイケア利用者の方々と関わってきた(つもり)。

それに加えて、金村自身の

「この人を良くしたい」

「この人を幸せにしたい」

「この人の苦痛を和らげてあげたい」

「この人の一番の理解者であり見方でいたい」

「病気を治してあげたい」

「社会復帰させてあげたい」

「さまざまな技能を獲得させてあげたい」

「そのために自分の出来ることを最大限にする」

「ちゃんと相手を思っていれば伝わる。変わってくれる」

そんな情熱を胸に抱きながらやってきたのでした。

「俺は出来るぞ!」「役立つ人間だぞ!」という過信もあったような気がします(自分では自信だと思っていたのですが)。

もし、その時の金村のままで今のイロハニトイロを立ち上げていたらどんな事業所になっていたことでしょう。

きっと、

どうやったらたくさん出席できるかの工夫をし、

どうやったら遅刻しないかの工夫をし、

どうやったら作業に集中して取り組めるのかの工夫をし、

どうやったらトラブルが起こらないかの工夫をし、

どうやったら仕事をたくさんできるのかの工夫をし、

どうやったらたくさんお金を生み出せるかの工夫をし、

どうやったら、元気になって一般企業に就職できるかの工夫をしていたことでしょう。

そのためには、たくさんのルール(決め事)を作り、それに従えない人を指導し、それでも従わなければ愛情を掲げて叱りつけ、こちらの理想通りに成長していく人を大袈裟なくらいに賞賛していたことだと思います。

え?それが当然でしょ?

と思う方もいらっしゃるかもしれません。

いえいえそんなことはありません。

5年前の出来事を境に、本当はそれが相手を苦しめ、成長を阻害し、幸福から遠ざけていることに気付かされたのです。

自分は相手を助け、幸福に導いていると思ってやっていることが、実は相手を苦しめ障害を作っていたなんてこんな恐ろしいことはありません。

このことに気付けた時、とても胸が苦しくなり、これまで関わりを持たせていただいた患者さん(利用者さん)たちに対する罪悪感でいっぱいになりました。

本当に申し訳ありませんでした。

以前の考えから脱したもののまだまだ歩みの途中です。

そして新たな学びの真っ最中です。

「本当にイロハはこんなやり方でいいのか?」

「これで大丈夫なのか?」

という不安の中でこの4年間みんなと不安を共有しながらなんとか運営を続ける事ができました。

それも少しずつ安心に変わってきています。

なぜなら、現に今のイロハニトイロから一般企業に就労する人や新しい目標を持って卒業する人、イロハで生き甲斐を見つけてすっかり変わっていく人が出ているからです。

もちろんイロハを嫌って出ていく方もいらっしゃいます。

このあたりのことについては「イロハニトイロの正体」という題目で後日話させていただこうと考えています(これも最近わかったことなので、金村の中の大きな学びの内容です)

以前の考えのようなものを作業療法の実習生さんたちは求めていたんだと思います。

きっと学校でもそういうことを教わっているから。

では、このような考えだった金村が、なぜ今は全く逆といってもいい考えになったのか。

それに至った出来事は何だったのか。

それを次回からお話しさせていただきます。

今回の内容で気付いて欲しい視点は、

「結局その人(当事者)の事は全く見ていない」ということです。

全て自分よがりの自分の為のものだったということです。

それを「あなたの為」にすり替えていただけ。

誤魔化していただけ。

う~~~ん。
きっとよく分からないですよね。




おそらく次回を読み進めて抱ければ、一見よく見える以前の考えのおかしさに気付いていただける事だと思います。

             イロハニトイロ所長

                  金村栄治