vol.7 イロハニトイロは悪いところ?!
- 2019年08月29日
- 所長の学び
イロハニトイロが始まって1年と4カ月が過ぎました。
イロハトイロではいろんなお話をします。
というか自然といろんなお話が生まれてきます。
自殺をしようとした話だとか、自傷行為やODの話とか。
過去の辛かった話、自分の苦しい生活のこと。
時には自分の弱みなんかも話してしまいます。
そんな中、こんな声も聞かれるようになってきたのです。
「イロハニトイロに来るのが辛い。怖い」
「金村(私です)に騙された」
「理想と現実は違う。現実の生活はとっても苦しい」 などなど。
つまり、それはこういうことなんです。
イロハニトイロに来れば、叱られることも怒られることもありません。
仕事をしていなくても何も言われません。
お喋りをしていても、床に寝転がっていても、間違っても、失敗しても、何も言われません。
むしろ、スタッフも一緒になってやっています。
何があっても「大丈夫」「それでいい」と言われます。
そんな環境だからこそ、
ありのままの自分が少しずつ出せる
安心できる
「こんな自分でもいいんだ」と少し自分を許せる気がする
そんな風に感じて下さるそうです。
これはとっても嬉しいことです。
でも一方で、家に帰ればそうではない現実が待っているそうなんです。
また良い子でいないといけない現実が、
「しなければならない」ことに縛られた生活が、
そして自分を分かってくれない人たちが現実にはたくさんいてまた苦しくなるとおっしゃるんです。
そうすると、
「イロハに行かなきゃ良かった」「騙された」「イロハは理想ばっかり」という思いが出てきて、
それならいっそのことイロハに行かない方がいいんじゃないかとさえ思ってしまうそうなんです。
(それでも来てくれるのが、ありがたく嬉しいことです)
そんな話を一人ではなく、いろんな方から聞くようになってきました。
なるほどなぁ、そんな風に感じるんだ。
確かにそれは苦しいよなぁ。
そう思う一方で、
そんなに苦しい現実をこの方たちはこれまで生きてきたんだ。
そして今もそんな現実を生き続けているんだと、胸が苦しくもなるのです。
僕も実は同じように「しなければならない」という考えの中で自己を否定しながら生きてきたので、とっても気持ちが分かる気もするんです。
そして僕は、皆さんに言うわけです。
「現実の生活でも、同じようにしてもいいんですよ」
って。
そうしたら当然のごとく猛反発です。
そりゃそうですよね。
これまでずっと良い人のがんばり屋で「しなければならない」を優先して生きてきたし、周囲からもそれを求められていたのだから、それ以外のことをするなんて、これまでの人生を否定することですもの。
そして必死に、できない理由を並べ立てます。
そんなことしたら、こうなっちゃう。
こんなこと言われる。
こう思われるに違いない。
相手とは長い付き合いだから分かる。
金村には分からないかもしれないけど、私にはわかる。
そうやってできない理由をたくさん話してくださいます。
そして僕はまたまた言ってしまうわけです。
「実際にやってみたことはあるんですか?」って。
すると当然返ってくる言葉は、
「やっていないけど、私には分かる」
です。
そして僕は、さらにこんなことを言わせていただきます。
「もしやりたいと思ったら、もしその勇気が持てたのなら、一度やってみてはどうでしょう。
いえ、でもそれは自分でやりたいと思ったらでいいので、やらないという選択をしてもいいですから。
それがあなたの生き方ですから、どれを選んでも正解です。」
はい。
ここからが僕の学びです。
この方たちは、この後どうなっていったか?
本当に何もしなかったのか?
これまで通り変わらない現実生活を続けたのか?
実は、皆さんやってみるんです。
「皆さん」というと語弊がありますね。
もちろん実行するまでに大きな勇気と傷つく覚悟がいりますから、時間がかかります。
人によっては数か月かかる方もいらっしゃいます(なので実行できないままの方もいらっしゃいます)。
そして、皆さん涙ながらに教えてくれるわけです。
「思っていたようなことは起こらなかった。」
「大丈夫だった。」
って。
むしろ、こんな良いことがあった。
こんなことをしてくれた。
こんなことを言ってくれた。
考えていたのとは真逆の答えにとっても驚くんです。
そして少しずつ現実生活でも自分らしくいられること、人に頼ること、
自分の「したい」を大切に生きること、
それが周囲の人たちも自分も幸せにすることだった
ということに気付いていくわけです。
そんな話を聞くたびに
人間は本当に強い生き物だなって思うんです。
誰もがたった一度の自分の人生を、主人公として自分らしく生きる強さを持っているんだと思わされるわけです。
いやきっと、そんな強さ、たくましさを育てていける可能性を誰もが持っていると思うんです。
ここは僕にとっては、とっても大きな学びなんです。
こんな学びを日々いただき、僕も共に感動してしまうんです。
このような姿を見せて頂くたびに僕は思います。
僕たち支援者がすることって、自分の人生を自分らしく生きるための勇気と覚悟を育てることなんじゃないのだろうかって。
これからもイロハニトイロは、
利用した人が「来なきゃよかった」「ここの存在を知りたくなかった」「騙された」と思われる、そんな場所であり続けたいと思います(笑)。
それがその方の人生を変えるきっかけになると信じて。