イロハニトイロ

vol.49-51 支援者が障害を作っている?!

病気を治そうとするから治らない(11)

(とあるエピソード)


精神科病院に入院中のある高齢の患者さんが、夜になると失禁(おもらし)をしてしまっていたそうです


「天井の水道管が壊れていて、そこから水が落ちてきてズボンを濡らしている」

と毎回訴えます


専門知識を持った看護師さんが、その患者さんを安心させるために言います


「大丈夫ですよ。天井には水道管は通っていないし、水は落ちてきませんよ」


それでも失禁はおさまりません

ある日、その病棟に荷物を持ってきた配達員がその患者さんと出会いました


そしてその高齢の患者さんはその配達員に同じように訴えます

「天井に水道管があって、そこから水が落ちてきてズボンを濡らして困っている」


その配達員の若者は言いました

「それは大変ですね。分かりました。直してもらうように言っておきます」

その日を境に失禁は見られなくなりました


これ実際にあったお話のようです

不思議ですよね

(とあるエピソード2)


精神科に入院するある患者さんが何度もナースコールを押して看護師を呼びます


思うように体が動かせないからと、布団を直してとか、喉が渇いたとか、それほど重要でもないことですぐにナースコールを押すのです


またそれだけでなく、看護師さんに嫌味を言ったりとても嫌な態度で看護師さんに絡んできます

看護師さんはイライラしながらも訴えに対応します

それでもその行為はおさまりません

ある日ナースステーションでその患者さんの不満を言い合う場面がありました


どれだけその患者が面倒な人なのか、どれだけイライラさせられているか、

看護師さんそれぞれの日ごろの思いをそこにぶちまけたわけです


日々の怒りや不満を出し切った後にある看護士が

「でもきっとあの人も寂しいんでしょうね」とポツリと言いました

その言葉を皮切りに他の看護師たちもその患者さんに共感するような発言を言い始めます


そして、もっと構ってあげよう

もっとこちらから関わってあげよう

そんなあたたかな想いにナースステーションが包まれました

そしてその日を境に頻繁なナースコールはなくなり、患者さんの態度も穏やかなものに変化していったそうです

あれ?看護師の心持ちが変わっただけ


まだ実際は何もしていないのに問題行動はなくなってしまったそうです

不思議ですよね

どちらのエピソードも患者さんを変えようとしていないんです


支援者自身の心持ちが変わっただけです

どう変わったのでしょうか

それを次回お話させていただければと思います

      イロハニトイロ所長
           金村栄治