イロハニトイロ

vol.49-⑱ 支援者が障害を作っている!?

不確実な状況に耐えれない支援者

前回、心のご病気を患った方々はつまずきが大きかった人であり、

本当の求める助けが無くて苦しみの中で耐え続けている人なのではないか、というお話をさせていただきました。

この不安感、恐怖感、焦燥感、孤立感、無気力感など不快な感覚を感じながら

それに耐え続けているって凄いことだと思うんです。

一方で支援者の方はどうか。

そういう不快な感情や不確実な状況に耐えれない人たちだと僕は思うんです。

だからすぐに

問題を見つけようとしたがる

相手の訴えをまとめようとしたがる

決めつけようとしたがる

解決しようとしたがる

変えようとしたがる

これらって、本当に相手の為なんでしょうか?

もしかすると、支援者がこの“不快な感情“に耐えれないがために行動していることなのかもしれません。

頭では「あなたの為にやっている」と信じ込んで。

子育ての場面では特に「自分の不確実性に耐えれない部分」が顕著に現れると僕は子育てをしていて思います。

子どもの話もろくに聞かずに

「それはあなたが悪い」

「それはこうすればいい」

「なんでそんなことするの」

と親の価値観で操作しようとしてしまいます。

子どもが困っていたら、子どもが助けを求める前についつい手を貸して助けてしまいます。

時には子どもに代わって解決しようとしたりします(友達や学校のトラブル)。

もちろん家に引きこもっていると、引きこもらないようにさせてしまいます。

このままだとこの子の人生は悪い方に行ってしまうのではないか、という親の不安感に耐えられずに行動してしまうわけです。

でもどれもが実際には、子どものため(患者さんのため)になっていないことが多く、より問題を複雑化させています。

あれれれれ?

私たちが、問題を作り出してそれを解決させようとする原因には、

もしかするとこの私自身の問題が隠れているのかもしれません。

いや確実に隠れています!

このように負の感情に耐えうる力を

「ネガティブ・ケイパビリティ」と言うそうです。

私たち支援者には、あるいは親には、

この「ネガティブ・ケイパビリティ」なる力が必要なのかもしれません。

私たちがこのような力を持てなくなっているのは学校教育の影響もあるようです。

日本では問題があれば解決することが正しいことであるかのような教育と訓練をさせられてきます。

問題を問題のままで置いておくとか、見守るという教育はされてきてないんですよね。

今一度この力の重要性を認識し、

私たち親や支援者が、この力を育てる意識を持つ必要があるのではないでしょうか。

僕は数年前からオープンダイアローグ(開かれた対話)という、

フィンランドで生まれた対話の方法を学んでいます。

そのオープンダイアローグの中に“7つの柱”という大切にする要素があります。

その中にもまさに「ネガティブ・ケイパビリティ」と同じ、

「不確実性に耐える」

というものがあります。

心を開き語り合う場を作るためには、

計画通りではなく、沈黙も大切にできるような不確実な状況に耐えることが大切になってきます。

でもついつい私たちは沈黙が怖くて喋っちゃう、

相手にあれこれ聞いてしまう、

解決したくなる、

上手く終わらせたくなる、

何か実りを得たくなるんです。

でもそれらを求めず、負の感情に耐えることがオープンダイアローグでは重要になってきます。

でも実は「耐える」ともちょっと違うんですよね。

「耐える」というと自分の意に反して体をこわばらせて一生懸命我慢する、みたいなイメージを持ちがちです。

しかし、本来の意味はそうではないそうです。

(フィンランド語から訳すときにそう訳しただけ。本来のニュアンスは違っていた)

この不確実な状況に「委ねる」「身を任す」といった感じです。

コーヒーの中に角砂糖が解ける感じを僕はいつもイメージしています。

そこにいるんだけど形がない、というか。

でもちゃんとこの場に自分はいるんだ、みたいな。

支援者からは問題に見えることも、

全ては今必要なものとして受け入れ見守り、そこに寄り添う姿勢(共に悩む、共に悲しむ、共に苦しむ)が大切なような気がしています。

すみません。

後半はオープンダイアローグの話になってしまいました。

今回も長くなったのでこの辺りで。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

        イロハニトイロ所長

             金村栄治

『目薬」と『日薬』

ネガティブ・ケイパビリティの重要さを説いている精神科医の帚木蓬生さんが大切にしてる2つの「薬」を少し紹介させていただきます。

それは「目薬」と「日薬」です。

「目薬」とは、

あなたのことをちゃんと見ていますよ。

「それは辛いよね。それは苦しいよね。」と分かってくれている人がいる。

「日薬」とは、

人の変化には時間が必要。

時間が人の心を癒していく。

時間が人の心を変化させていく。

これらの2つの薬が人の心を癒し、自らの力で課題に立ち向かい、人生に変化をもたらしていく。

そのために「ネガティブ・ケイパビリティ(負の状況に耐える力)」が支援者の資質として必要だと話されています。