vol.44-⑭【対話】出会えてよかった?
- 2023年06月19日
- 所長の学び
こんにちは。
今回は少しプライベートなことを書かせていただきます。
もちろんそれが「対話」のお話に役立つからと思っているからです。
このイロハニトイロのブログの中で、何度かプライベートな話を公開してきました。
数年前、僕が息子を虐待していたということも話させていただきました。(vol.36-⑦参照)
その中で、僕が虐待をしなくなったきっかけをくれた妻のことも少し話させていただいたのですが、そこだけを読めば、なんと睦まじい仲の良い夫婦なんだろう、と思ってくださったかもしれません。
しかし、しかし、金村家にも離婚の危機はやってくるのです。
(いらぬ誤解をして欲しくないので一応お伝えしておきますが、お金がらみや女性問題とかそういうのではありません。僕自身の心の問題です。まあ、だから厄介なのですが…)
結婚10年目を迎えて、これまでのいろんな出来事が重なり、そしてその時の家庭状況もあり、僕の中で「離婚」という考えが湧き起こってきていました。
分かってもらえない。
大切にされていない。
家でしんどさばかりを感じる。
家に帰りたくない。
寂しい。
苦しい。
楽になりたい。
あの時こうだった、ああだった。
あんなことされた。こんなこと言われた。
ほら!やっぱりこうだ。
やっぱり僕のことをこんな風にしか思っていないんだ。
あーーー、もう苦しい。苦しい。
そんな思いを持つ日々を送るようになっていました。
ちょうどその時期に、一年(100時間以上)を通して行われるオープンダイアローグの研修の真っ最中だったのです。
その研修の中で、いかに僕は自分の想いを日々語っていないのか、
いかに本当に伝えたい人に自分の本当の想いを伝えようとしていないのか、
いかにいつも仮面を被って大切な人と接しているのか、
ということに気付かされたのです。
(余談ですが、夫婦関係を良くするためにたくさんの本を読みました。
「妻のトリセツ」なんて何度読み返したか。つまり“方法”ばかりに意識が向いていたということですね。今となっては、その時の自分が滑稽に見えてしまいます。
そしてお察しの通り、上手くいくのはその時だけです。僕の心はいつも自分を押し殺しながら苦しいままなんです。何も解決していない。
だからいつも苦しさの中で「頭」で考え「心(本当の自分)」を押し殺して苦しんでいたのです。
そうすることが夫婦が上手くいくために必要なんだと言い聞かせて。)
そして、思い切って妻と対話をしてみることにしたんです。
話すきっかけとなったのは、妻に無視されて(いや、僕が無視していたのかもしれません)一週間話さない、という出来事があったからでした。
その時に「あ、もう離婚していいわ。じゃあ、逃げずにちゃんと対話しよう」と思い行動してみたのです。
(やっぱり勇気がいるので、何かそのきっかけが必要だったのです。小心者)
どんなことを話したか。
(詳しい内容は申し訳ありませんが伏せておきます)
決して妻を責めるようなことは言いませんでした。
この僕の「本当の想い」を素直に言葉にしていくようにしたのです。
この「本当の想い」って実は、恥ずかしいものなんですよね。
だって子どもみたいに幼稚なことだから。
弱い弱い僕の心だから。
(それが本当の私でしたよね。vol.44-⑦参照)
そんなのを話すなんて恥ずかしくてたまりません。
でも、研修で自分の思いを大切に出来ていないこと、語れていないことに気付かされました。
どうせ離婚する。
だから話したっていい。
そう言い聞かせて、全部さらけ出しました。
(全て “アイメッセージ” で。
“アイメッセージ” とは「私は~」で始まり私の気持ちを伝える言葉です。「私は~で苦しい(気持ち)」など。
反対に “ユーメッセージ” とは「あなたは~」「あなたの~」で始まる相手を責める言葉です。「あなたが~だから私は嫌なんだ」など)
するとどうなったか。
妻も泣きながら自分の素直な想いを語ってくれたのです。
ここも詳しい内容は伏せておきますが、3日間(子供が寝静まった夜に)それぞれの想いを語り合うことになったのです。
自分がどうして欲しいのか、どういうことで傷つくのか、どういうことを感じ考えているのか。
そんなのをお互いに語り合ったのです。
もうお分かりですね。
そこから夫婦関係は良くなっていき、今ではとても信頼し合えるパートナーになっています(と思っています)。
若い頃みたいにラブラブになったとかそんなことではありませんし、喧嘩がなくなったわけでもありません。
しいて言うなら「ちゃんと喧嘩できるようになった」ということでしょうか。
「ちゃんと喧嘩する」って思いを伝え合い認め合うということです。
それが日々できるようになってきたと感じています。
金村がなぜこの話を出したのか?
「ウチは良い夫婦だぜ」と自慢をしたかったのか?
いえいえ、決してそうではありません。
もしあの時、僕が対話していなかったらどうなっていたことでしょう?
もしあの時、僕が心を閉ざし相手への不満をぶつける対話をしていたらどうなっていたことでしょう?
今回上手くいったのは偶然だったんでしょうか?
僕を無視していた妻が心を開いて語ってくれたのはなぜなんでしょうか?
決してこうはならなかった。
出発点の僕次第で対話は変わっていくのです。
本当の「対話」には、“人と人の心を繋げる力” があると僕は思っています。
そして“人の心を癒す力” があると思っています。
それを自分の人生の大きな出来事を通して感じることができたということをお伝えしたかったのです。
だからこそ対話がこれまでの日本の精神医療のおかしさを切り開いていくものになると考えているのです。
「頭」で議論するのではなく、
相手を論破するのでもなく、
「心」を語り合っていく。
「本当の私」で語っていく。
その意味や効果を強く感じているということをお伝えしたかったのです。
最後までお付き合いしていただきありがとうございました。
あと2回で「vol.44」は終わりになります。
もう少しお付き合いください。
イロハニトイロ所長
金村栄治