イロハニトイロ

vol.42‐⑦【内職】イロハの考えから遠ざかっていく?

前回の続きになります。

安易な内職を導入することによって起こる問題や失うものについて書かせていただいています。

これまで、6つほど書かせていただいたのですが、まだまだ思い浮かぶことがあります。

しかし、結局イロハではどうすることに決めたのか、を最後にお話ししておわりにしたいと思います。

これまでの記事を読んで頂いた方は、“安易な内職導入”がイロハの大切にしてる考えから遠ざかっていくことを感じていただけたのではないでしょうか。

何度も言いますが、「内職が悪い」と言っているのでは決してありません。

目の前のしんどさ解消のために安易に内職を導入することの危険性をお話ししているだけです。

どうぞご理解下さい。

こうやって内職を簡単に導入することの危険性を並べ立てても、やっぱり金村は内職が導入できたらいいなと思っています。

でもちょっと想像してみます。

今の状態で内職を導入したら?

どんなふうになっていくんだろう?

1.簡単な軽作業の内職を導入

2.手を出しやすいから、多くの人がそれに手を出し始める。
  (新しく入所される方や、「内職必要ない」と言っていた人たちもその手軽さから、きっと手を出し始めるだろう)

3.以下の力動(心の動き)が生まれにくくなる。

  自分でできることを探す(自発性・主体性)

  他者に協力を依頼する(関係作り・コミュニケーション)

  「何もしない自分」でも受け入れられる経験をする(自己肯定)

  自分の能力を高めることを考える(自己研鑽)

  創意工夫をする(試行錯誤)

4.スタッフ側にも「これをやらせておけばいい」という考えが生まれ、少しずつ思考停止に陥っていく。

5.みんなが程よく気持ちがいいから、自分たちがやっていることに疑いすらも持たなくなる。
  (ここが一番怖いところ!)

6.少しずつ「内職」が占める割合が増えていく(手軽にできるし失敗も少ないから)。

  常にたくさんの仕事があるという状態になる(しかし、その対価(お金)は低い)。

7.いつしか常に仕事をすることが中心となっていく。

  仕事をしない人、出来ない人が「良くない」になっていく。
  (ここはイロハの特徴的な考えです。このあたりの詳細の説明は今回は控えます。仕事をすることは間違いなく大事ですが、それが正しいことだという価値観をイロハの中では作らない、ということです。)

8.スタッフは仕事を管理する人になる。

  利用者はそれに従う人になる。

  その管理する者とされる者という立場がどんどん強まっていく。

9.納期が間に合わないと感じると、勤務時間中にや勤務時間外にスタッフが代わりにその内職作業を行う。
  (本来のスタッフの役割から遠ざかっていく。)

10.作業能力の差が明確になり始めると、「出来高払い」で工賃額に差を付けるようになる

11.遅刻しない、頑張って集中して作業できる、失敗しない、効率よくこなせる、そんな人が「良い人」として評価されていく。

  (さらに能力主義に拍車をかけていく。)

12.それができない人はもっと頑張るように言われる(応援?叱る?)。

  理想からの引き算で見られるようになる。

あれ?

あれ?

あれれ?

それなら、イロハがイロハでいる必要ある?

もっと工賃が高くて厳しい事業所はたくさんあります。
(もちろんそれらの事業所だって素晴らしいです。むしろその方が社会的には評価されるでしょう。)

なぜ、イロハに来てくださったんだろう?

なぜ、イロハを選んで下さったのだろう?

なぜ、遠いところからわざわざ来てくださるのだろう?

それはイロハニトイロがその人にとって必要だからだと信じています。

なら、こんな安易に内職を導入することは間違っている。

やっぱり最後は、そう思うのです。

でも

でも、やっぱり内職も必要。

そんな気もする。

そうやって、メンバーともスタッフとも話し合った結果どうなったか。

内職導入、それ自体はOK!

ただ条件を満たした内職にしましょう、ということになりました。

それは

・「内職を導入したい」というメンバーが現れること(自発性)

・その人が中心になって内職を導入すること(主体性・責任)

・3人以上の協力者を集めること(他者との協力)

・失敗やトラブルも受け止め共に解決すること(痛み)

もちろん、スタッフはサポート役として協力します。

最終の責任もスタッフが持ちます。

ただ主体的になって、そして他者と繋がり、相談・協力し、喜びだけでなく痛みも味わって取り組む。

そんな内職をしたいと考えています。

今のところ、これを聞いて「やりたい」という方はおらずムーブメントは起きていませんが、いつかそういう方も出て来ることだと思っています。

過去には、「乾燥ハーブ」の販売を企画から運営まで手掛け、他メンバーを巻き込んで行ってくれたメンバーさんがいらっしゃいます。

イロハの働き方は、自分たちが主体となって仕事を行う。

それを育てるのには時間がかかりますが、そこにこそ本来の仕事の価値があると信じています。

長くなりましたが「内職導入」について最後まで読んで頂きありがとうございました。

次回はこの流れで、「資本主義」についてメンバー達と勉強したことを公開したいと思います。

       イロハニトイロ所長

            金村栄治