vol.38-⑤ どうしてそうなるの?
- 2022年04月25日
- 所長の学び
こんにちは。
前回の続きになります。
なぜ、現在のイロハニトイロの考えになったのか。
それは所長をしている金村の経験が大きく影響している。
その経験が何なのかを辿っていくということでお話させていただいています。
前回は、自分の病気の体験から、
良くなることを必死に頑張るのではなく、
良くなることを「あきらめる」ことから世界は開けてきた。
そんな不思議な体験を7年前に経験したことをお話しさせていただきました。
まだこの時は体験ですから、
「あきらめる」ことの本来の意味も
「自己肯定感」や「自信」の本来の意味も
「自愛」という言葉すらも知りませんでした。
(※これらの言葉は後々詳しくご説明します)
そして支援者としての変化もすぐにはなく、
これまで通り目の前の人を「良くする」ために、作業療法という武器を使って頑張っていきます。
そして転職して初めて経験する「訪問看護(訪問作業療法)」の中でのある出来事が今に繋がるに大きな変化をもたらせることになるのです。
それではその辺りのお話を。。。
僕は精神科病院での仕事を離れ、初めて「訪問看護」という地域に出てのお仕事をすることとなりました。
当時、勤務先には作業療法士は僕しかいません。
僕には作業療法士としての知識と経験がたくさんある。(調子乗っています)
心理教育だって、認知行動療法だって、たくさん勉強してきた。
学生の指導だってたくさんしてきたし、本だってたくさん読んだ。
だから作業療法のことはもうだいたい分かっている。(超、調子に乗っています)
よーーし、これまで積み上げてきた僕の力を発揮するぞ!
作業療法士って凄いところ見せてやるぞ!
なんて息巻いて始めた訪問看護の仕事です。
(「訪問看護なのに作業療法?」と思う方に少しだけ解説します。「訪問作業療法」単独のものは現在診療報酬として確立されていません。ですので「訪問看護」の中に作業療法士さんもいる、ということです。ですので基本的には看護師さんがメイン担当で自宅に訪問をし、作業療法士はサブで別の日に訪問しています)
話したいエピソードはたくさんあるのですが、金村がしていたことに絞って以下に羅列してみたいと思います。
● 家にこもりがちな人に外での活動を一緒にする(散歩、野球、買い物など)
● 部屋が片付けられない人に片付けるための計画を一緒に立てる。実践する。
● 運動不足の人に室内で体操や運動をする
● 一緒にモノづくりをする
● 考えの歪みがある人に認知療法を行う
● 家族に対して当事者への上手な関わり方を教示する
● 強迫的な人に行動療法をして行動を変える
● 落ち込んでいる人の話を聴き、元気づける
● 拒食の人にどうやったら食べられるようになるか一緒に考える
● 必要な情報があれば資料を作って届ける
などなど
こういったことを作業療法の知識と経験を総動員して行っていたわけです。
もちろん、相手に「どうしたいのか?」「どうしてほしいのか?」「どうなりたいのか?」を聞いて、その方の要望に沿った形で支援を実施してきたのです。
もう一度言います。
その方の要望に沿って支援を実施してきたのです。
1年後、結果はどうなったと思いますか?
良くなるどころか、その人の状態や金村との関係は悪化していったのです。
それも一人ではありません。
金村が訪問に行く人の多くがそうなっていくのです。
態度が悪くなったり
暴言を吐くようになったり
訪問を拒否したり
担当を変えたいと希望を出したり
部屋がキレイになるどころかどんどん汚くなっていく、
家から出るどころかどんどん家に引きこもっていく
拒食が治るどころか、さらにひどくなっていく
考えが修正されて前向きになるどころか、どんどん別の歪んだ考えを生み出していく、
元気になるどころか、より元気をなくしていく。
えーーーーーーー、どういうことーーーーーーー!
僕はこんなに「あなたの為」に頑張っているのに。
「あなたがそれをして欲しい」と望んだから僕はその要望に沿ってやってあげたのに。
なんでよ!なんでよ!なんでなの?
不思議の国に迷い込んだような気分でした。
僕はアリス?
こんな大きな大きな壁に出会ってしまったのです。
病院では上手くいっていたことが、地域で生活している人たちには全く通用しない。
なぜ?
なぜ?
なぜ?
なぜ?
なぜ?
(※これもいつか説明しますが、それだけ病院の中というところは、患者さんが支配され管理された場所だったということです。地域支援の重要性をいつかお話しできればと思っています。)
どうして、金村の支援が地域では通用しなかったのか。
その気づきの体験がこの後に起こります。
それを次回詳しく話させていただきます。
引っ張ってしまってすみません。
話が長くなるのでここで今回は止めておきます。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
イロハニトイロ所長
金村栄治