イロハニトイロ

vol.2 “正しさ”が苦しみの原因?

私たち支援者と呼ばれる人間は、その文字通り支援をしようと考えてしまいます。

「支援をする」という言葉には、弱者を救済するかのようなイメージが含まれています。
つまり、どっかで上から目線!!


でも支援者ってそんなこと気付かないんです!
だって良いことをしていると思い込んでいるんですもの!
「間違っているはずない」と思っている人もきっといると思います!

私が頑張れば、誰かの生活が良くなると本気で思っています。

僕もその一人です。

いや、ここでは「その一人でした」と言わせてください。


イロハニトイロは、支援しないという支援をしています。
ここはしっかりとお伝えしなければならないところです。


でも「支援しないという支援」ってどういうこと???


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意味わかんないですよね。

僕はイロハニトイロを立ち上げる前に訪問看護の仕事を2年間していました。

その頃の僕は、この目の前の人の生活を良くしてあげたい、僕が一番の理解者でありたい、何か役立つことを少しでもしてあげたい。

そんな思いで、様々な方のご自宅を訪問させていただいていました。

素晴らしい心構えだと思いませんか(笑)
実は一番痛いことなんですが・・・

どんなことをしていたかというと、
具体的には、汚い部屋を整理することを訓練したり、外へ出ることを促したり、認知療法で歪んだ考えを修正させようとしたり、
そりゃもう、「正しさ」を押し付けまくっていたわけですね。


そんな僕がどんなことになったのか。
勘のいい人は気付くかもしれません。


そうです。利用者さんは生活が良くなるどころか悪化していきました。

暴言
無視
拒否
不満そうな態度
挙げ句には訪問の打ち切りの希望まで出てきたのです。


僕の中で大混乱???
え?正しことをしているのに何がいけないの?
あなたがそれを望んだんだよねぇ?
あなたの望むことを叶えているじゃない?
あなたも「良くなりたい」って言ったよねぇ?

わからない? なんで? なんで?


そんな時、ある利用者さんが教えてくれました。

「あなたのその正しさが僕らは苦しいんだよ」って。

は?どういうこと?


そうです。
僕が正しいことを押し付ければ押し付けるほど、
僕があなたを良くしたいと思えば思うほど、
僕があなたの役に立ちたいと思えば思うほど、

実は、相手の現在を見下し否定することになっていたのです。
「あなたは弱くてダメな障害者」というメッセージを送っていたのです。
自分だけ「僕って役立ってる」って勝手に気持ち良くなって。


あちゃーーーー、なんてことを自分はしていたんだ!
「あなたの為、あなたの為」だなんて嘘ばっかりじゃん!

結局は全て自分の為だったじゃん!!

何やってるんだろう?
そりゃ、こんな支援者に訪問なんか来て欲しくないよ。
心を開く事なんてできないよ。


この後全ての利用者に謝罪しました。
すると利用者さんらから本音が次々に出てくるようになったのです。
「実はずっと苦しかった」って。
とっても大きな学びの時間になりました。
僕らが学ぶべき人は先輩でも先生でもなく、目の前の利用者さん(患者さん)なんだと思います。

僕の本当の支援がやっとここから始まったのです。



そんな経験を経て、立ち上げたイロハニトイロ。

なのにまだまだ頭の固い僕は、同じ過ちに陥っていたのです。

ミーティングって大事だよね。
ミーティングで利用者の意見を聞いて運営に反映させよう。

自分の意見は言葉で表現できないとだめだよね。
自分の言葉で言える練習をしてもらおう。

時間は守れる方がいいよね。
来所時間をきちんと守れるように促していこう。


そうやって自分の中の正しさをまたメンバーに押し付けていたのです。

そしてメンバーの方々が教えてくれました。


ミーティングって実は本音が言えていない。不満を抱えながら周りの意見に合わせて返事しているだけ。
それなのに、あなたも賛同したよね?と同意したと責められる。
本音は、普段の生活の中、良い関係の中でしか吐き出せないんだよ。

自分の意見を言葉で表現出来たらそりゃいい。
でも出来ないから苦しんでいる。
自分でもどう思っているのか、どう感じているのかわからない。
先生や職員の前では、障害者を演じないといけない。
相手の求める意見を言っている自分がいる。
だって本音を言っても否定されるだけだもの。

時間を守りたい気持ちはある。
でも「この時間に行かなきゃ」と思うだけでプレッシャーとなって、結局行けなくなる。
そして行けない自分を「ダメな奴」だと自分で自分を否定する。
わかってる。わかってるんだけど、その正しさに僕たちは苦しんでいる。


あちゃーーー、またまた失敗!
また正しさで相手を苦しめていたみたい。


きっと僕たちは正しさで関わりを持ってはいけない。
「正しさ」を持ち出した途端に、自分の防衛に変わってしまう。

それに「正しさ」なんて、時代や状況で簡単に変わってしまうもの。
あるいは人によって「正しさ」は違うもの。

イロハニトイロは日々、悩み続ける場所でありたいと思うのです。
正しさを持ち出して簡単に答えを出さない場所。
失敗だらけ、問題だらけで共に悩み考える場所。
そんな場所でありたいと思うのです。

「支援しないという支援」とはそういうこと。