vol.49-62 支援者が障害を作っている?!

支援しないという支援(7)
イロハに来てくださっている実習生(学生)の質問を使わせていただいて、
「支援しないという支援」についての具体例をお伝えしています
【質問3】
利用者の皆さん、自分の意見が言えてすごいです
仕事も何をするかいつも自分で決めているんですか?
イロハニトイロでは、スタッフがあれこれ指示を細かくすることはなく、利用者さん(メンバー)達が主体的に仕事に取り組んでいます
慣れない学生は、どうしたらいいか分からず戸惑ってしまい、
指示がなくても自分たちで考えて動いているメンバーの姿を見て驚くようです
ここにも「支援しない支援」の効果が隠れているように思うので説明させていただければと思います
学生さんが、どうしたらいいか分からず戸惑っているように
メンバーの皆さんも最初から自分で動けるわけではありません
ですから、もちろんスタッフが指示することもありますし、
メンバーさんからスタッフに「どうしたらいいですか?」と聞いてくださることもあります
うんうん、ここは普通ですよね
きっと他の事業所さんでもそんな感じだと思います
この後の態度が「支援しない支援」になります
支援する意識が強い場所では、きっとこんなふうになるのではないでしょうか?
仕事することが良いことであり、
この人(メンバー)が上手に仕事ができるように支援しなければ
だから、仕事に上手く導入して働く練習をしてもらう
そして足りないところはスタッフがサポートして慣れていってもらう
そうやって仕事の技術を高めてもらおう
こんなふうに考え、支援をしようと動いていきます
(間違っていたらすみません💦でも少なからず作業療法士さんはそう考えます)
イロハは違うんです
必ず聞くのは
「○○さんはどうされたいですか?」
ということです
そのメンバーが、
「今日はしんどいので何もせずに座っています」
とおっしゃるのであればそれでいいし、
「どうしたらいいか分からないので指示して欲しんです」
とおっしゃるのであればそのお手伝いをさせていただきます
つまり、
どうするのかは
“その人自身が決める”
ということなんです
このブログを読んでくださっているのが支援者の方であれば、
おそらくこのような疑問が湧きおこるのではないかと思います
「ずっと何もしなかったらどうするの?」
「ずっと休んでいたらどうするの?」
「何も良くなっていかないじゃないか」
当然そう思いますよね
でもですね
ずっと何もしなくてもイロハではOKなんです
ずっとイロハに来なくて休んだってOKです
良くならなくてOKです
そして、
「何もしたくない」というその方の気持ちを尊重してイロハの退所を勧めます
だって、そうですよね
イロハニトイロは就労支援施設であり、
仕事の練習をしたくてイロハに来たんのですから
それをしたくないのであれば、今のその方にはイロハは必要ないということです
(これ厳しく聞こえますか?💦切り捨てるような感じがしますか?いえいえ、自分で選択することの厳しさと思ってください。それだけ皆さんご自身で選択する経験をしてこなかったってことです💦)
でも支援者は違うことを考えます
「そういう方々を仕事できるようにするのが支援なんだ」
と
イロハはそれをしないんです
「支援しない支援」とはそういうことです
本人が望んでいないのであれば、それは暴力と同じです
害です
あなたを良くしたい
助けたい
役に立ちたい
という思いに基づく支援が害になっていることほど悲しいことはありません
(このことは以前のブログでお話しました)
私たちは“支援しよう”とはしませんが、
本人が助けて欲しいと望めば出来る限りの力で精一杯のお手伝いをさせていただきます
私たちは「自主性」を育てたいのではありません
あくまで私たちが育みたいのは「主体性」です
その為に「支援しない支援」という姿勢が大切なんだと思っています
“自主性”と“主体性”が同じ意味なのでは?
と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、
これは似て非なるものです
むしろ意味は正反対です!
長くなってきたので次回そのことを説明させていただければと思います
この二つの違いを説明することで
「支援しない支援」の目的が少しご理解いただけるのではないかと思うのです
今回も最後までお読みいただきありがとうございました
イロハニトイロ所長
金村栄治