イロハニトイロ

vol.40-③ 不安の中で進み続ける。

こんにちは。

前回の続きになります。

そんな当事者の方々の思いで作られたイロハニトイロです。

まずは、社会に出るその一歩をイロハニトイロという場所から踏み出して欲しい。

どんなあなたでも大丈夫。

まずはその一歩を踏み出そう!


そんな思いで作りました。

(今思えば、なんかキレイな言葉過ぎてウソっぽくて嫌ですね。まだまだ当初は正義のヒーロー感があったんでしょうね)

しかし、しかし、基本的には頭の固い金村です。

「こうあるべき」をついつい持ってしまう、そして傷つくのを恐れる弱い人間です。

やっぱり他の事業所を見学させてもらって、先輩の方々から教えてもらいたくなるんです。

あれ?目の前の人(当事者の方々)から学ぶって思っていたはずなのに、僕の弱さがそうさせないんですよね。

「これまでにない事業所を創る」ということはつまり“見本”が無いということです。

そこが僕は不安でたまらない。

「無いなら作りましょう」とカッコいいこと言いながら不安だらけ。

そんな不安に押されていくつかの事業所を見学させていただくことにしました。

結局、行くんか―――い! (ごめんなさい。弱い金村がそうさせます)

見学をさせていただいたところでは黙々と内職作業をされていたり、スタッフが厳しく指導する場所でした。

もちろん見学ではスタッフ側からの説明ばかりを聞くので、それらのやり方の必要性や意味を教えられます。

支援者から聞く話はそりゃもっともらしい根拠を持ったものです。

でも何とも言えない違和感があり、胸の奥がざわつくのです。

だって利用者さんらの思いは聞けないし、本当にそれを望んでいるのかもわかりません。

本当にこれでいいのか?

これが苦しいからと引きこもっている人が多かったのではないか?

そして3個目の事業所の見学を終えた頃に、イロハを利用し始めてくれたメンバーの一人からこんなことを言われたんです。

(他施設の見学は、事業所立ち上げ前だけでなく、立ち上げ後も行っていました)

「金村さん、もう見学に行くのやめませんか?」

「自分たちで自分たちの為の作業所を作っていこうって言ってたのに、結局他の事業所を真似ることになります。」

「他は関係ない。私たちがどうかを話し合いながら作っていきましょう。」

もちろんこんな簡潔な言葉ではなく、時に怒りを混ぜたような言葉も用いながら、不安の解消のために他施設の見学に行っているだけの僕を諭してくださったんです。

(それを簡単にまとめたのが上の言葉です)

それを聞いて、やっと僕も吹っ切れたのです!

ちょっと待ってください!

いや、また嘘つきました! 

今ちょっと見栄はりました!

実は吹っ切れてなんかいません。

やっぱり不安だらけ。

先の見えないトンネルを歩いているかのようでした。

小心者の僕にはとても苦しい事だったと思います。

でもこの不安のままで皆さんを信頼して身を委ねて行こうと覚悟したのです。

利益を生み出す仕事をすることにおいて、一番手っ取り早いやり方は「内職」をすることです。

下請けとしての内職作業をもらってきて、ひたすら単純作業をする。

簡単だから誰でもすぐに取り組める。

決まったノルマを達成すれば少ないながらもある程度のお金も入ってくる。

小心者の僕には一番に飛びつきたくなるものです。

しかし、イロハはそれをやめました。

それを踏みとどまらせてくれたのは、他のスタッフたちでした。

内職が良いとか悪いとかどうとかじゃないんです。

何が良くないのかというと

きちんと考えもせず、自分の不安の解消のためだけに簡単に内職に手を出している事です。

ここが危うい!

これって自分都合、 事業所都合なんです。

あれ?あれ? 当事者の人の為の当事者の人と作る作業所じゃなかったの?

ダメだ!ダメだ!逃げちゃダメだ!とスタッフ間で何度も話し合い、下請けの内職作業を入れるのをやめました。

(もちろん今内職的な仕事もしています。そのあたりの説明は今回は長くなるので割愛します。内職が良い悪いではなく、内職をどういった意味で行うかという取り組み方の話です)

そして本当に意味のある仕事とは何なのか?

どういった取り組み方をすればいいのか?

ここから迷い、考え、やってみて間違い、見直す時間がやってきます。

そしてこの“見直す”の大きなものが今回の「工賃アップのための取り組み」になります。

次回、私たちは何を間違っていたのかをお話ししたいと思います。

でも実は「間違った」とは思っていなくて「来るべき時が来た」という感覚なんです。

その辺りの説明をしていければと思っています。


ぜひ最後までお付き合いください。



       イロハニトイロ所長

            金村栄治